まちの電気屋をしていて、お客様からの依頼内容で意外に扱いが難しいのが漏電対応です。
商品が漏電しているなら修理かお買い替えで話は早いのですが、電気配線まわりでしていることが多く大変です。
その場合は一番に外回りや水周りにある妖しげなコンセントをあたります。それでも解消しなければ、次はいよいよ配線を診ていかなければいけません。
一般的に電気配線は天井や壁に隠蔽されており、いまさらどのようにつながっているのかめくっていかない限り正確には把握できません。めくるといっても作業的に大変ですし、第一に復元できることが条件となります。時間がとてもかかるわりには、目に見えての成果が少ない。正直言えば、できれば特に繁忙期は避けたい用件です。
で、今回。梅雨の大雨の後、配電盤主幹漏電ブレーカーがどうしてもおちて家全体に電気が使えないとのご依頼。今夏は猛暑日続きでエアコン設置に追われる日々。しっかりと時間をとるのは難しかったのですが、日頃からお世話になっている顧客様ですから、最低限のご不便で済ませられるようにとまずはお伺いします。
絶縁抵抗計で配電盤の分岐ブレーカー毎に測定し、漏電している回路を探します。そしてその漏電している回路がどの範囲で使われているか、テスターも使って調べ特定し、関わっている電化製品、コンセントを順番に外しては改善されないか診ていきます。ここまでは手間はかかれど、そう難しい作業ではありません。問題はこれで解決できない場合です。
今回もそうでした。ここから先は時間が全く読めません。なので、漏電回路の分岐ブレーカーをおとし、それ以外は使っていただけるようにしたうえで、漏電回路のうちどうしても必要なところに仮配線でコンセント、照明を仮設して急場をしのげるようにさせていただきました。「ご不便おかけしますが、猛暑騒動が収まるまでお待ち下さい。」エアコン取付の合間にできるような作業ではないので仕方ありません。
でご了解をいただき、間に電話で二回ほど様子確認などさせていただきましたが、結局一ヵ月半もお待ちいただくことになりました。「大変お待たせして申し訳ございません。」
配電盤から漏電しているエリアへの配線はどこを通っていそうか、そしてどこで分岐していそうか、そこを点検できる術はあるのかなど、おうちの築年数やいまの状況に自分のいままでの経験を足して考えます。
今回のおうちは築50年近い木造モルタル住宅で、1階の天井裏を点検するには2階の畳にその下のベニヤ板を揚げなければいけません。充分推測のうえ、一か所目を開けましたが、見当違い。でもその先が確認できたので次は自信をもって他所で再トライ。そうすると上の写真のとおり、圧着テープ巻きで5方向へ枝分かれしている分岐部分が見つかりました。
次は一経路づつ切り離して、その度に1階の配電盤まで降りて絶縁抵抗計の針に目を凝らします。ここでようやく漏電している系統が見つかりました。後で増設されているらしき階段下にあるトイレまわりと廊下から玄関にかけての電灯に向かう配線です。途中階段下あたりでさらに枝別れしているようなんですが、そこはいまさらさわれそうにありませんでしたので、根元で切ってしまいます。
劇的に改善です。でもまだこれで終わりではありません。廃止したことによりトイレコンセント、トイレ、廊下、玄関の照明が使えなくなりました。なので配電盤から別の新経路で電気配線を引っ張ってこなければいけません。照明は壁スイッチを新設していると大層なので、それぞれセンサライトで対応します。ここまでしてようやく完了です。
のべ3日間、10時間以上かかりました。顧客様の安全・安心には替えられませんが、漏電対応の難しさが少しでも伝わったでしょうか。テライ電器では日常業務に加えて漏電対応できるほどスタッフの頭数が揃っていませんので、基本的にいつもお世話になっている顧客様だけに限らせていただいております。 y.terai